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マカロニほうれん荘 21〜40話

■021話 長距離ドライバーの孤独 77/10/03(41号)

マカロニほうれん荘の乗り物と言えばやっぱりこのママチャリである。

1巻199ページ7コマ目:きんどー・膝方流遊びの主要な方法「ごっこ遊び」がごくシンプルな形で行われている。

1巻206ページ1コマ目:オートバイに乗ったこの警官は31話でも登場し、この回でのことを思い出している。どんな端役の人物でも疎かにせず作品世界内に居場所を確保するやり方が徹底されている。多分作者はそれがマンガを描く基本だと考えていて、意識してやっているのだろう。そのやり方が全キャラクターに大変な生命力を吹き込んでいるのだ。

■022話 男たちは恋に 77/10/10(42号)

益田弘美ちゃん初登場。全編通して、そうじくんと同い年のレギュラーキャラクターは弘美ちゃんと敦子ちゃんしかいない。高校生活の場面も多いマンガなのに、ここまでのレギュラー陣は全員主人公より年上だったことになる。

2巻124ページ1コマ目:「おとなし」くて、「目立たな」くて、「なに食って生きてんのか」わからないほど、と弘美ちゃんを一コマで説明している。

2巻125ページ3コマ目:女の子から見て男の子がふざけ合っているところは魅力的だったりするのか? また、優等生のそうじがきんどー・膝方と仲がいいのは意外性があってグッとくるのかも知れない。
きんどーさんの持っているマジックハンドみたいなものは後にも出てくるが、マンガ表現としてきんどーさんの手が短いために導入されたのだと思われる。

2巻127ページ:そうじは被害者になることも多くトリオの中ではツッコミ役なので弱いイメージもあるが、ここでは行動的である。臆せず、しっかりした態度で弘美をデートに誘っていて、格好いい。
会話から、教室では何度か交流があった感じがする。

2巻135ページ4コマ目:他の客が消える演出が上手い。

2巻135ページ4コマ目:話の前後に日中戦争を持ってきて、あとの方ではそうじの絶望的な気持ちを戦争の泥沼化にダブらせている。こんなことをしようと思う/できるのは作者だけだろう。

あまりにも苦い終わり方であり、このままではそうじと弘美が可哀想すぎることが却って、この話に続きがあって救いが用意されていることを予感させる。弘美の次の登場は46話であり、結果的に半年の間が空く。
一回では終わらないストーリーがギャグの下の層に埋められる形ができつつある。

■023話 打倒!きんどーさん 77/10/17(43号)

前回の出来事からは一旦離れて、別の話になる。現実的に考えれば、そうじがあれ以来きんどー・膝方に激怒し続けていてもおかしくないが、そういう感情も含めて一度リセットされる。話を多方面から塗り重ねていくために一話読み切りという形はけっこう効果的と言える。

扉絵:レッド・ツェッペリンに扮した4人。

2巻140ページ6コマ目:5組は後半によく登場するようになる不良ばかりのクラスだが、ここで既にその設定ができている。

2巻143、144ページ:2ページ丸々きんどーさんのダンスシーン。この作品ならではのページ使い。これを無駄と見るか、どう見るか。

2巻148ページ3コマ目:今なら42歳で未婚の人などザラにいるが。

2巻148ページ7コマ目:まり子さんがシッターぶりを発揮。二人の長年の人間関係が垣間見えて味わい深い。

2巻149ページ2コマ目〜7コマ目:結婚を嫌がるきんどーさん。のちに明らかになってゆく膝方さんの態度と基本的には同じ。遊びと結婚は両立しないと彼らは考えており、目下のところ遊びを選んでいるのだ。

■024話 朝焼けに愛を語ろう 77/10/24(44号)

まり子不在の夜にかおりとそうじが同じ部屋で寝るという非常にドキドキする設定の回。もっとも実際には色っぽいシーンはほとんどない。ここでも笑いとラブストーリーの相克関係により、大量のドタバタギャグが色っぽい進展を妨げているともいえる。

扉絵:膝方さんが大変カッコいい。こういう劇画調の絵がちょくちょく入ってくるところもこの作品の大きな魅力だ。

2巻156ページ1コマ目:そうじとかおりが家族になっているような雰囲気がある。疑似姉弟といった佇まい。

2巻159ページ3コマ目:かぐや姫の「アビーロードの街」のごく一節だが、元の歌詞は「あの日のきみは」。

2巻160ページ9コマ目:こういうそうじは子どもっぽい。

結局、そうじが何故毎日庭で寝ていたのかという解明はされていない。かおりにこれだけ遊んでもらえば、二人もさぞ満足だろう。

■025話 敵前上陸 77/10/31(45号)

20話同様ギャグオンリーの回。センチメンタリズム、ゼロである。

扉絵:テディ・ボーイ・ギャング団の沢松くんが単独で登場。

2巻174ページ8コマ目:「トラトラトラ」は真珠湾攻撃の際の日本軍の電信文。

2巻178ページ4、5コマ目:昼休みにこんな放送の流れる高校だったらものすごく楽しいだろう。そうじが風紀委員だとわかるのは27話だが、この放送も彼の声かもしれない。

2巻179〜181ページ:圧倒的なリズム感! 名場面である。

2巻183ページ2コマ目:当時「FMファン」というFMラジオのオンエア曲を載せた雑誌があった。

2巻183ページ5コマ目:そうじはクマ先生の面倒までみることになってしまっている。

■026話 嵐を呼ぶ男 77/11/07(46号)

基本的にほうれん荘トリオしか出てこない回で、3人の仲の良さがたっぷりと楽しめる。

扉絵:「ふしぎの国のアリス」の冒頭でうさぎが時計を見て穴に飛び込む場面だろう。絵柄はアリス原著のイラストレーター、ジョン・テニエルに似せている。

作者は話の飛躍の仕方や幻想性においてルイス・キャロルと似た感覚を持っていたように思える。非現実を現実ならしめる詩の力がマカロニほうれん荘にはある。

2巻189ページ3〜7コマ目:台風が近づいている時に部屋の中で怪獣ごっこをしている二人。子どもだからこそこういうことができる。あるいは、非常時において全く動じない様子は頼もしいとも言える。そうじはこの場で唯一の常識人としての務め、親の役割を果たしている。きっと彼にとってこれはこれで楽しいことなのであって、読者もその楽しみを共有することができる。

2巻195ページ6コマ目:「鳥を見た」はウルトラQで怪鳥ラルゲユウス(ラルゲリュウス?)が登場した回のタイトル。

■027話 カーニバルの歌が聞こえる!! 77/11/14(47号)

2巻199ページ7コマ目:そうじが風紀委員であることがわかる。

2巻200ページ7コマ目:祈祷師の姿は、昔の時代劇などに元ネタがあるのかも知れないが、不明。

2巻203ページ5コマ目:妖怪研究家を名乗るのはねずみ男である。

2巻206ページ2コマ目:百地三太夫は戦国時代に実在した人物で伊賀流忍者の祖と言われる、とwikipediaに書いてあった。

2巻206ページ3コマ目:クマ先生の表情が……。

2巻206ページ4〜6コマ目:ルミちゃんが塀越しに入ってくる理由がわからない。

2巻207ページ:ルミちゃん語が爆発。特に5コマ目。ただし「エッチスケッチワンタッチ」は70年代初頭に小学生の間などで使われた言い回しで、作者のオリジナルではない。

2巻210ページ1コマ目:ZZ TOPは勿論ロックバンドの名前。

2巻211ページ:このシーンに限らない話だが、二人が人間でない何かに変身したり光線を出して物を壊すなどの現実離れした描写が多種多様な形で見られ、それに対して周囲も割と平然としていたり心底驚愕したりと様々な反応を見せる。文庫版選集第2巻の解説では小説家の菊地秀行氏がこれらをどう解釈すればいいのか戸惑っておられるようだ。作者からは29話において、変身は着ぐるみを着ているのだという回答が提出されているのだが、巨大化している場合もあったりして全ケースが着ぐるみで説明できるわけでもないし、説明として面白いから着ぐるみと回答しているだけとも思える。
他の作品で言えば、例えばウルトラマンが空を飛んだり光線を出したりするのも、科学的根拠があってそうなっているわけでは(多分)ない。科学の発達した他の星の生命だからという表面的な理屈が一応ついてはいるが、フィクションとしてここまでなら許されるだろうという線引きが常識的かつパッと見たとき整合性が取れる範囲で行われているだけである。
マカロニの場合その線を、きんどー・膝方の二人に限って当人の自由気ままな箇所に引けるということなのではないか。
膝方が宇宙怪獣に変身して巨大化するのは日常生活の一部として不自然ではあるが、何かの比喩などでは勿論なく、マカロニ世界内での現実なのだ。
これは、想念が現実化し形をとる、子どものごっこ遊び内の感覚であり、お伽噺や幻想譚の感覚である。また、命ずればそこに事物を存在せしめる言葉(詩)の力の現れでもある。そうじ始め周囲の人間は二人のごっこ遊びに巻き込まれて当初は驚愕するが、やがて二人のわがままな線引きに慣れてゆく。
さいわいこの遊びには「どんなに建物などを破壊しても人は死なない」とか「重傷者は出ない」とかいった暗黙の決まり事もあるように思う。文化祭をぶち壊されるのは困ったことには違いないけれども、そういう意味では安心はしていられる。二人は自分達の住む世界が安全な遊び(=フィクション)の中だと重々知っていて行動しているのかも知れない。
第1話の項で「マカロニほうれん荘」は時間の流れるマンガだと書いたが、こういう場面を見ると“永遠の時間”もごっこ遊びという形で内包されているように感じる。

■028話 いとしのミノ虫!! 77/11/21(48号)

恋人がテーマの回。作者は秋をロマンチックな季節だと考えているようで、81話でも恋人達の集う秋の公園を描いている。異性愛者だけでなく、ゲイカップルやレズビアンカップルも描かれているのがいい。

扉絵:全回通して最高の扉絵の一枚。キャラクター達のヌードだが決していやらしくない。

3巻7ページ7コマ目:ここでやっとルミちゃんが膝方さんと二人だけのデートに漕ぎ着ける。膝方は自分から女性を誘うことはなく常に誘われる側である。このあたり、男が楽をしている話ではある。

3巻13ページ2〜4コマ目:アニキの清純女性好みは78話に詳しい。

3巻18ページ5コマ目:この忍術、何か元ネタがあるのかも知れないが、不明。

3巻18ページ6コマ目〜19ページ4コマ目:誰と誰が恋人になるのか/結婚するのかでいくつかの選択肢を示して読者の関心を引くのはよくある手法だ。前半で膝方とルミ子をデートさせ、後半でそうじとかおりを並んで歩かせているところから、作者はそうじ・かおりもペアとして考えていたのであろう。2話あとの30話で敦子がアップルハウスに来てかおりとバトルになるので、その布石のような感じもする。

4月に出会って以来二人は、かおりが警察に逮捕されたそうじの身請けに行ったり、夏祭りに行って神輿を担いだり、夜テレビを一緒に見たりして、段々距離を縮めてきた。そうじはアップルハウスにもよく行くようになり、互いに気心も知れたし、話も合う。半年が過ぎたある日、恋人達で埋まる秋の公園内をたまたま二人で歩く機会があり、ふと思いついてかおりはそうじの気持ちを探ってみることにした。ちょっと遠回しに訊いてみると、内心ではそうじも意識していたらしく動揺してしどろもどろになっている……というようなシーン。
かおりは要するに「あたしたち、けっこういいところまで来てるんじゃない?」「あたしはそうじくんと付き合ってもいいよ」と言っているのである。一方そうじはかおりのことは好きだけれども、大人過ぎてとても対等に付き合える相手とは思っていないようだ。2話冒頭の夢のシーンと似たような構図だが、作品前半はそうじの夢物語という側面が強いから自然な流れとも言える。

だが、このラブストーリーはこれ以降それほど発展しない。30話で敦子を触媒にする形で描かれ、その余波が35話でちらっと出てくるが、その後は全く描かれなくなる。作劇上難しかったからというより、弘美の復帰を考えて、はじめから途中まで描いてほったらかしにする手だった可能性がむしろ高い(作者は例えば「プルプルぷろぺら」でも一つのエピソードをほったらかしにしている。といっても決して悪い手法ではなく、全ての終始をカッチリ描くより却って現実感や膨らみの出せる面もある)。なので、作品中に何本かある恋愛線のうちで、そうじ・かおりのラインは割と地味だ。

けれども、この二人がお互いに恋愛感情を多少なりとも抱いていたこと、それが結局二人の胸に秘められたまま終わったことは、マカロニほうれん荘前半における非常に魅惑的な要素の一つだと思う。40年後の今、二人はこの日のことを憶えているだろうか。

■029話 輝ける青春の虫干し!! 77/11/28(49号)

扉絵:マンドラゴラの根になったきんどーさん。実際にこの姿で登場するのは31話で、この回には登場しない。ツェッペリンの曲「聖なる館」がアルバム「聖なる館」ではなく一枚後の「フィジカル・グラフィティ」に収められているようなものか。

3巻24ページ:二人の変身が衣装によるものだという説明が一応なされている。

3巻30ページ2コマ目:「調子」は「都合」の間違いだろう。

3巻32ページ5コマ目:ここでのアニキの口調は俳優の森田健作調。「なつかしいドラマ」とは勿論、森田主演の「俺は男だ!」など。

■030話 11月は乙女の戦い!! 77/12/05(50号)

ここから中嶋敦子ちゃんが本格的に登場し、派手なラブコメディが展開されてゆく。彼女はマカロニ中盤を盛り上げた大変な功労者である。

扉絵:3人によるパンクバンド。そうじの表情により、別世界スピンオフ的な雰囲気が醸し出されている。

3巻42ページ8コマ目:「イエス! きんどーさん」は26話の膝方のセリフと同じ。周囲の人間にも同じ言い方が広まっている点がリアルだ。

3巻44ページ6コマ目:きんどーさんはさすがに気づいていたようだ。

3巻44ページ7コマ目:こういうシーンでのそうじの胸の内も知りたいところだが……。

3巻46ページ1コマ目:細かくて恐縮だが、かおりの耳の下の髪の毛にベタの塗り忘れがある。40年前の慌ただしい手作業の痕跡を今に伝えるようで感慨深い。

3巻49ページ8コマ目〜:弘美の時にやったのと少し似た過剰な冷やかし。今回は関係ない破壊行為にどんどんずれて混沌としてゆき、結果としてかおりと敦子のバトルが忘れ去られてしまう。でも、きんどー・膝方が形勢不利だったかおりのためにやったのかと言うと、どちらかの味方をする意図はなかったように思う。とにかく二人はシリアスな恋愛話に耐えられないみたいだ。

3巻53ページ4コマ目:「なんであたしたちがやらなきゃいけないのよぉ!」のセリフは、実際に壁や窓などを壊したのはかおりだから。昔読んだ時は気がつかなかった。

■031話 暁に種をまいた!! 77/12/12(51号)

扉絵:古代の銭湯跡のような場所に裸の女性たちが集っている。レッド・ツェッペリン「聖なる館」やジミ・ヘンドリクス「エレクトリック・レディランド」の英国盤・日本盤からインスパイアされたのか。

3巻57ページ4コマ目:マンドラゴラ(マンドレイク)は実在する植物。ヨーロッパで魔法の原料として使われもしたが、基本的には薬草である。

3巻58ページ1コマ目:それまでまともだった膝方があっという間にボケ役にまわり、この次にはまたツッコミに戻る。優れた漫才に見られる手法。

3巻60ページ7コマ目:一日が始まる前にさえギャグがその邪魔をせずにはいられない。そうじは完全に親の役になり物事を前に進めようとしている。

3巻64ページ2〜5コマ目:21話に出てきた警官。その時のエピソードを基にしたセリフである。

3巻64ページ8コマ目:膝方のスカートめくりは基本的にはこのシーンが最後で、以後出てこない(74話に一度だけ例外あり)。女性に対する接し方が変わっていく。セクシャルな接し方を全くしなくなる。

3巻66ページ3コマ目:そうじの素振りからわかるように、彼は5組の不良学生達が怖いのだ。49話でも睨まれて縮みあがっている様子が描かれている。だが、膝方ときんどーがいつも彼の傍にいて子どものようにまとわりついているせいで、不良達もそうじには手出ししようとしない。そうじが親の役目を担う代わりに、膝方・きんどーはそうじの盾になり、謂わば守護天使を務めているのだ。

それにしても、彼が膝方・きんどーと同じ部屋に住んでいることは、5組に限らず他の生徒からどう思われているのだろうか。けっこう特殊なポジションだから一目置かれているのかも。

ほうれん荘トリオが自転車に乗っている絵にはまさに青春という言葉がふさわしい。40年経っても見るたびに胸が熱くなる。

■032話 第1次“暁”戦争!! 77/12/19(52号)

タイトルの前に1ページ半のオープニングがある凝った出だし。
スキヤキ強奪を真珠湾攻撃に譬えている。スキヤキは当時のマンガなどでは豪華な食事の代名詞だった。
二話続いて「暁」という言葉がタイトルにきている。日本海軍の駆逐艦の名前だが、真珠湾攻撃には加わっていなかったようだ。

3巻72ページ6コマ目〜77ページ4コマ目:空母上での騒然とした情景の合間にほうれん荘でのショットが挟まれ、最後はほうれん荘の夜に収束する。大勢のきんどーさん・膝方さん、一人ずつのきんどーさん・膝方さん、どちらもがこのマンガにおける現実である。見事と言うほかない展開だ。

3巻86ページ1コマ目:部屋の妙な場所から現れるのもよく使われているギャグである。

3巻87ページ2コマ目〜:警察は全員エアロスミスのメンバー。一人不参加。久しぶりにそうじの逮捕で終わる。

■033話 天国への階段!? 78/01/01(1号)

タイトルはツェッペリンの超有名曲から。その曲の内容と扉絵とは、女性が登場する以外の共通点はない。
この回の最後のコマでこの曲が流れるとよく合っているかも。

3巻98ページ3〜6コマ目:前田馬之助が40話に先がけて登場している。この時点で既にキャラクターが出来上がっている。

3巻99ページ2コマ目:クマ先生の奥さん・ゆかりさんに似ているが別人かな?

3巻99ページ3コマ目:明治〜昭和初期の日本画のようだが、元ネタのある絵なのかどうかわかりません。

■034話 戦いのドラム!! 78/01/02(2号)

ススキ小次郎の初登場回。

3巻111ページ5コマ目:このコマで小次郎の何者たるかをほぼ説明し尽くしている。

3巻112ページ7コマ目:この回あたりはそうじと敦子がペアとして成立していて、けっこう良いカップルに見える。全編読んだ後ではツーショットが新鮮。

3巻118ページ7コマ目〜119ページ3コマ目:「別場面スリップ法」。

3巻119ページ4コマ目:ピグモンが原の中に立っているモニュメントみたいなものが気になるが何だかわからない。

3巻120ページ〜121ページ:膝方と小次郎の対決。小次郎が、きんどー・膝方と同じ「ごっこ遊び」側の人間であることがわかる。決闘も実は「決闘ごっこ」である。

3巻121ページ6コマ目:グレコは日本の楽器製造ブランド。

3巻122ページ5コマ目:ルミ子を膝方の隣に立たせ小次郎を見送らせていて、キャラクターに応じた振る舞いのさせ方が実に上手い。他のキャラクターの反応もお決まりながら楽しい。

■035話 聖夜の大行進 78/01/09(3号)

クリスマスパーティーの話である。当時から生きていた人間の大雑把な感覚としては、日本においてクリスマスは、1970年位までは全く子どものための行事で、その後家族全員や友人同士のイベントになり、恋人が二人だけで過ごす日になったのは80年代半ば以降かと思う。そういうことを研究した論文(?)もどこかにあった気がする。したがって、ここでの登場人物達も「二人だけの夜」というイメージは誰も持っていないようだ。
ちなみに、バレンタイン・デイは当時イベントとして全く定着しておらずこの作品でも描かれていない。ハロウィンはもちろんである。

3巻124ページ6コマ目:そうじは敦子相手でも「ですます」で喋っている。

3巻124ページ8コマ目:マカロニほうれん荘に一回も出てこなかったものに「そうじと仲の良い同年代の男子高校生」がある。何故出てこなかったのかは不明だ。ここではセリフだけだが「美術部の先輩」が登場する。男子かどうかわからないがその人(達)もちょっと見てみたかった。

3巻125ページ6コマ目:2話続けて二人の同じようなシーン。好評だったのかも知れない。面白いけど、女の子に迫られて「おかーさーん」はかっこ悪いな……。

3巻129ページ5コマ目:階段の下にいるのは23話できんどーさんとお見合いした病院の看護師長さん。その後も交流は続いていたようだ。

3巻131ページ2コマ目:大家さんの部屋になぜか雅子さんがいる。

3巻131ページ5コマ目:30話の続き。

3巻135ページ1コマ目:一般住居での大人数のホームパーティーという文化はまださほど日本では浸透していなかった筈なので、このシーンは欧米的で、当時としてはおしゃれな感じがしたのではないか。
膝方さんが読者に向けて乾杯している。

3巻135ページ5コマ目:当時は当然CDではなくアナログ・レコード。

3巻135ページ6コマ目:描き文字からして、20世紀前半のキューバの楽曲「タブー」だろう。日本ではストリップのBGMとして使われ、ドリフターズの加藤茶のコントでもそのイメージが引き継がれたが、元はストリップとは何の関係もない曲。

3巻136ページ5コマ目:熊太郎くんはいつも無表情だ。

3巻137ページ5コマ目〜:きんどーさんとクマ先生の友情。ほっとする。

■036話 真理への挑戦!! 78/01/16(4号)

ほぼ、ほうれん荘トリオのみの回。舞台もほぼ、菠薐荘に限定されている。年末の平和な日常風景で、なんとなく心落ち着く。文庫版選集にも選ばれている渋い一編。

扉絵:劇画調だが、元ネタがあるのかないのか全くわかりません。

3巻140ページ6コマ目:きんどーさんと膝方さんがお揃いのトレーナーを着ている。

3巻141ページ4コマ目:猪木対アリにこんなシーンはなかった。アリは関節技は使わない。

3巻148ページ9コマ目:読者に向けたセリフ。

3巻148ページ10コマ目:庭シーンのコマで、木枯らしを表す線が描かれている。こういう細かいところに五感に訴える感覚が感じられ、東京のどこかに菠薐荘が本当にあるような気がしてくる。
菠薐荘の建物や敷地全体の構造はわかりにくい。きんどーさんの出てきたところは裏庭への出口のようだ。

3巻149ページ2コマ目:「冬眠」と「ビタミンC」がどう結びついてこのセリフが出てきたのかわからない。

3巻149ページ4コマ目:そうじの背後に何か捨て置かれているのも現実感がある。

3巻149ページ6コマ目〜150ページ2コマ目:「別場面スリップ法」。三人が扮しているのが何かはわからない。

3巻151ページ5コマ目:ツッコミ役がたまにこういう反応をすると可愛さ倍増。

3巻152ページ4コマ目:クマ先生の格好は、エンジェルというロックバンドがあったが、それだろうか?

■037話 新たなる門出!! 78/01/23+30(5+6号)

中盤そうじの部屋のシーンでは、様々な素材が気の赴くまま、本来の意味を剥ぎ取られ、同一平面上に等価値的にバラまかれる。一種のコラージュというかヒップホップ的感覚がある。

扉絵:マイルス・デイヴィスの「ビッチズ・ブリュー」のパロディーと思しい。

3巻154ページ1コマ目:この頃はモップはまだあまり使われていなかったのかも知れない。

3巻154ページ7コマ目:通常は大掃除の後にしめ飾りを飾るので、大晦日に大掃除では一夜飾りになる。本来大掃除はもっと早くすべき。

3巻158ページ4コマ目〜159ページ1コマ目:当時放映中だった「唄子・啓助のおもろい夫婦」という番組を下敷きにしているようだ。

3巻159ページ8コマ目:膝方のちょー人ぶりを表現するアイデアの中でもとりわけファンタジックなもの。可愛らしく、楽しい。分裂はこの後あちこちで見られる。

3巻164ページ1コマ目:何の爆発だか不明。

3巻165ページ4コマ目:そうじの部屋をメチャクチャにしたのは二人なのだから本来かおりが謝ることではない筈だが、彼女は責任を感じている。連載開始時から彼女のこの感情は続いており、その背後に膝方への気持ちがあるとも考えられる。

3巻165ページ6コマ目:大晦日なのに雅子が子ども連れで来ている。旦那さんは年末年始に休めない仕事なのかも。彼女が姫野家の茶の間にいるカットは35話やその他の回でも見られるので、地縁的な親しい付き合いがあるのだろう。
そうじもまた、家族の一員になっているような雰囲気がある。

3巻166ページ6コマ目:中嶋麻美ちゃんが登場している。中嶋家の家族構成や麻美ちゃんの役回りも既にある程度考えられていたということか。

3巻167ページ4コマ目:菠薐荘全体の俯瞰図としてはこのコマが一番分かりやすいかも知れない。きんどーさん・膝方さんが上がっているのが下宿、手前の屋根が大家さん宅。下宿の向こうが前36話で穴を掘ったりしていた裏庭だと思われる。
作者は充実していた1977年を感慨深く振り返りながら菠薐荘の全景を描いたのではないだろうか。

■番外編02 巨大なる戦場!! 78/02/01(増刊号)

太平洋戦争時のガダルカナル島からの撤退を素材にしている。史実としてどこまで正しいかは、私は不勉強でよく知らない。戦争はあまりの悲惨さゆえにギャグマンガの題材にはしにくい筈である。だが、それはそうとしても、この回はかなりの傑作と言ってよい。

「逮捕してくださいませ!!」に続くスターシステム型スピンオフ作品の第2弾で、例によりキャラクター達がマカロニ本編と別世界の話を演じている。そのうえ、入れ子のように修学旅行のネタが入っている。

4巻134ページ9コマ目:同じギャグが25話にある。

4巻138ページ4コマ目:テディ・ボーイ・ギャング団の苗字がここで初めて明らかになる。

4巻138ページ5コマ目:かおりの苗字「姫野」が示されるのも、ここが初めて。

4巻139ページ4コマ目:新年の増刊号なので、お中元をもらって食べたのが半年前というのは、マカロニ本編の時間軸とも合ってはいる。

4巻140ページ5コマ目〜:撤退前の兵士が現地でこの歌を歌っていたかどうかは不明。

4巻141ページ1〜4コマ目:非常に妙ちきりんなギャグで面白い。

4巻141ページ5コマ目〜142ページ2コマ目:「別場面スリップ法」だが、そもそもベースになっている話もスピンオフであり、二重にスリップしている面白さがある。みんな大真面目な顔で演技しており、大変楽しい。

4巻144ページ5コマ目〜145ページ7コマ目:続いて天の岩戸。スリップというほどではないが、日本兵が日本神話に基づいてロックンロールをやるという奇抜さ!

4巻146ページ6コマ目:文子先生は本編でもクリスチャンのようだ。15話参照。

4巻148ページ4コマ目:最後は全員で歴史を遡行するという、ある種SF的な結末である。

■038話 訪問者のラプソディー!! 78/02/06(7号)

扉絵:中のマンガだけで忙しいのにこんな扉を描くとは、大変なド根性と言うほかない。

3巻170ページ1〜4コマ目:奇妙なやり取りだ。どう見てもふざけているようにしか見えないが、きんどーさんは「べつにふざけてるわけじゃない」と本気で言う。何故なのか?

3巻170ページ5コマ目:当時の下宿屋では電話は取り次ぎというところがけっこうあった。電話を自室に引くのに八万円くらいの権利金が掛かったので金の無い学生には引けなかったし、学生時代だけだからということで引かない人も多かったのである。いちいち大家さんを通すのは架ける側としても受ける側としても面倒でうっとおしかったが、今から見れば一言二言の交流が派生して良かったような気もする。

3巻170ページ10コマ目:そうじの母についてセリフの中でだけ言及される。心配なら直接電話してくればよさそうなものだが、(多分母方の)おばさんに頼んで様子を見てもらっているようだ。作者は意図的にそうじの両親を出すのを避けている。

3巻172ページ1コマ目:タートルネックにブレザー姿。凛々しい。

3巻175ページ8コマ目:下宿から表通りに出たところの風景が背後に見える。あまり住宅は無く、畑が広がっている。

3巻178ページ1コマ目:そうじは大人になりたがっている。きんどー・膝方とは逆。

3巻178ページ9コマ目〜179ページ4コマ目:リズム感のギャグ。

3巻180ページ8コマ目〜181ページ1コマ目:高校生で研究のために留年しているという理屈が面白いし、おばさんもそれで納得しているところがいい。

3巻182ページ7コマ目:女性を笑顔でドキッとさせる膝方。取り立てて発展しなさそうな話の種も蒔いてある。

3巻185ページ7コマ目:ちょっとだけますむらひろし風の猫。

■039話 西部戦線異常なし!! 78/02/13(8号)

タイトルは映画にもなった小説「西部戦線異状なし」から。「異状」が「異常」になっている。
爆弾、お芝居、クマ先生授業、体育倉庫と内容がコロコロ変わる。一つのネタだけで統一するのはしんどかったのか。

3巻193ページ8コマ目:体育倉庫のオチで生かされる。

3巻199ページ7コマ目:受験研究社のCMを元にしたようだ。

3巻201ページ6コマ目:そうじまで笑ってしまっている。

■040話 独立攻撃隊西へ!! 78/02/20(9号)

前田馬之助の初登場回。全員が馬之助に対するツッコミにまわってしまう。テンポの速いキャラクターが多い中、一人極端にゆっくりした人物が入ると確かに面白い。

扉絵:主要女性キャラクターが描かれ眉目麗しいが、各人相互に関連がなく羅列的である。

3巻209ページ1コマ目〜210ページ1コマ目:フキダシを風船に見立てた一種のメタフィクション。

3巻210ページ3コマ目:「話がちっとも進まないでしょ!!」というのはマカロニほうれん荘の本質を突いたセリフである。既に何度か書いたが、この作品は何かが本格的に始まる前にギャグがそれを食い止めている状態を描いている。

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